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1.7億円着服事件が示す、内部不正を防ぐ仕組みの作り方

OSHIKATSU / FIELD NOTE

1.7億円着服事件が示す、内部不正を防ぐ仕組みの作り方

静岡県警が1.7億円を着服した男を逮捕。推し活などに使われた巨額横領はなぜ長く見過ごされたのか。経理の権限集中、チェック体制の穴、中小企業が今すぐできる対策を実務目線で解説します。

ニュースの概要

静岡県警は、勤務先から約1.7億円を着服したとして男を逮捕しました。報道によれば、着服したお金は「推し活」などの趣味や遊興に使われていたとされています。1.7億円という金額は、一度に抜き取られたものではなく、長い期間にわたって少しずつ積み重なった可能性が高いと考えられます。個人の浪費癖の話として片づけられがちですが、これだけの額が長期間気づかれなかった点に、勤務先側の管理体制の弱さが表れています。この記事では、事件そのものよりも、なぜ見逃されたのか、どうすれば防げたのかに焦点を当てて整理します。

引用元: 1.7億円着服、男を逮捕 「推し活」などに使用―静岡県警:時事ドットコム(時事ドットコム)

分析・見解

巨額の着服は一度ではなく小さな積み重ねで起きる

1.7億円と聞くと、大金を一気に動かした事件を想像しがちです。しかし実際の横領は、数万円から数十万円の不正を何年も繰り返す形が大半です。仮に月100万円を抜けば、約14年で1.7億円に届きます。

日本公認不正検査士協会などの調査でも、不正の発覚までの平均期間は1年以上とされ、金額が大きい事案ほど長期化する傾向があります。「少額だから気づかれない」という成功体験が、次の不正を呼ぶ構造です。

不正が起きる三つの条件がそろっていた可能性

不正研究では「不正のトライアングル」という考え方が有名です。動機(=お金が必要な理由)、機会(=やれてしまう環境)、正当化(=自分への言い訳)の三つがそろうと、不正が起きやすくなります。

今回、動機は「推し活」などの出費でした。推し活は一回あたりの額は小さくても、グッズ、遠征、ライブ参加と際限なく膨らみます。本人の収入では賄えなくなったとき、手元の資金に手を伸ばす誘惑が生まれます。

一方で、動機は外から見えにくい点が厄介です。会社が防げるのは主に機会の部分であり、ここを断つことが現実的な対策になります。

見逃しを生む権限の集中と点検の甘さ

長期の着服には、ほぼ必ず「一人にお金の流れが集中している」状況があります。請求書の作成、振込の実行、帳簿への記入を同じ人物が担い、他の人が内容を確かめない形です。

近年の類似事例を見ても、経理担当者が十数年にわたり同じ業務を任され続けたケースが目立ちます。長年の信頼が、そのまま「誰も確認しない」状態につながるのです。

信頼と確認は別物です。信頼している相手でも、仕組みとして確認することは失礼にあたりません。むしろ担当者本人を守る行為でもあります。

推し活という動機が映す、お金の使われ方の変化

もう一つ、今回の事件で見落とせないのは、不正の使い道が変わってきている点です。かつては賭博や投資の失敗が典型でした。いまは配信者への投げ銭、ライブの遠征、グッズの大量購入など、日常に溶け込んだ消費が動機になります。

派手な生活をしているわけではないので、周囲の目には異変として映りません。「ぜいたくをしている人を警戒する」という従来の勘所は通用しにくくなっています。外見ではなく、お金の流れそのものを記録で確かめる姿勢が必要です。

ビジネスへの影響

小さな会社でも今日から始められる三つの対策

大がかりな仕組みがなくても、効果の高い対策はあります。第一は、請求書の承認、振込の実行、帳簿の記入を別々の人が担当することです。人数が足りない場合は、経営者が月に一度、銀行の入出金明細を直接確かめるだけでも抑止力になります。

第二は、強制的な休暇や担当替えです。連続して数日休ませると、不正があれば隠しきれずに発覚することが多くなります。第三は、通帳やネットバンキングの管理を担当者一人に任せきりにしないことです。

「疑う」ではなく「守る」ための仕組みとして伝える

対策を導入する際に最も大切なのは伝え方です。「あなたを疑っている」と受け取られると、現場の士気が下がります。「誰でもミスや誘惑は起こりうるから、全員を守るために確認を入れる」と説明するのが効果的です。

また、内部通報の窓口を設けることも有効です。不正の発見は、監査よりも社員からの通報が最も多いとされています。匿名で相談できる経路を一つ用意しておくだけで、早期発見の確率は大きく変わります。損害が1.7億円に膨らむ前に気づけるかどうかは、日々の小さな仕組みで決まります。

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