ニュースの概要
プレジデントオンラインが、女性の趣味を切り口にした「結婚できない趣味ランキング」を取り上げた。1位はディズニーランド、2位は海外旅行、3位が推し活である。推し活は応援やグッズ購入、イベント参加を楽しむ活動として広く定着した。だが度を越すと、支出の膨張、時間の拘束、部屋の占有といった形で、結婚後の共同生活に響きかねないと記事は述べる。ただしこれは趣味そのものを否定する主張ではなく、生活の設計との相性を問う内容と読める。本稿ではこのランキングを、趣味の是非ではなく、暮らしの資源の配り方という視点から読み解く。
引用元: 「推し活」が女性の結婚しにくい趣味ランキングで3位に(President Online / Yahoo!ニュース)
分析・見解
ランキングが映すのは趣味の優劣でなく生活との摩擦
このランキングを見て、まず確認したいのは上位三つの共通点である。ディズニーランド、海外旅行、推し活。どれも楽しい趣味だが、お金と時間をまとまって使う点で共通している。つまり問われているのは趣味の良し悪しではなく、結婚後の限られた家計と休日に、どれだけ収まるかという相性である。
ランキング形式は目を引く。だが、ここで「結婚できない」とされるのは、趣味を持つ人の人柄ではなく、使い方の設計が共有されていない状態を指すと考えるのが自然だ。同じ推し活でも、月の予算を決めて楽しむ人と、請求額を把握していない人では、相手から見える印象がまるで違う。
推し活の支出は、見えにくいうえに増えやすい
推し活の支出には癖がある。チケット、グッズ、遠征の交通費と宿泊費、配信の投げ銭。一回ごとは小さく見えても、積み重なると固定費に近い規模になる。しかも新しいグッズや公演が次々に出るため、上限が自然には決まらない。
独身のうちは自分の裁量だけで済む。だが結婚すると、家賃、保険、将来の教育費といった共通の支出と同じ財布を見ることになる。ここで初めて、推し活の金額が相手の目に触れる。隠していたわけでなくても、「知らなかった」という驚きが不信に変わりやすい。問題の本体は金額の大きさより、見えていなかったことにある。
時間と部屋の取り合いが、静かな不満になる
もう一つは時間だ。ライブは休日や夜に集中し、抽選やチケット争奪のために平日の隙間も使う。相手が家族の予定を立てにくいと感じれば、不満は少しずつ溜まる。
そして部屋である。グッズや資料は数が増え、収納を圧迫する。リビングに並べるのか、専用の棚に収めるのか。こうした細かな取り決めが効いてくる。大きな衝突より、小さな不一致のほうが、長く続く共同生活では消耗の原因になる。特に在宅時間が長い人ほど、視界に入る物の量には敏感になる。置き場所の合意は、愛情の問題ではなく、動線と収納の問題として扱うほうがうまくいく。
同じ趣味でも続く夫婦と揉める夫婦を分けるもの
似た例は他にもある。ゴルフや釣り、車やカメラも、かつて男性の趣味として同じ指摘を受けてきた。揉める組と続く組を分けたのは趣味の種類ではなく、予算、頻度、置き場所を先に話していたかどうかである。推し活は、それが女性の側に現れただけだと考えられる。
もう一点、推し活には相手を巻き込める余地がある。ライブに一緒に行く、配信を一緒に見るなど、共通の話題にする夫婦もいる。趣味は摩擦の種にもなるが、会話の種にもなる。ランキングの3位という数字は、その両面のうち一方だけを切り取ったものだ。
ビジネスへの影響
結婚を考える人が最初に交わしたい三つの数字
結婚前に話すなら、推し活の年間総額、月の上限、遠征が重なる月の扱いの三つである。感情論になりやすい話題だが、数字にすると議論は落ち着く。家計簿アプリで直近半年を振り返れば、本人も実額に驚くことが多い。正直に見せたうえで、貯蓄や共通支出を先に確保し、残りを自由枠とする。この順序なら、推し活を削る話ではなく、守る話になる。
話し合いの場は、お金の話だけで終わらせないことも大切だ。相手の価値観に敬意を示し、同じ趣味でなくても理由を聞くだけで、受け止められ方は変わる。
企業が従業員向けに出せる支援の具体策
企業側にも使える視点がある。福利厚生で家計相談やマネープランの講座を用意する際、趣味の支出を例外扱いせず、題材に含めるとよい。特に若手社員は、推し活を含む自由に使えるお金が給与の大きな部分を占めることがある。また、チケット当選時の柔軟な休暇取得は、制度として整えれば離職防止にもつながる。趣味を理由に評価を下げない姿勢を明示することが前提である。
商品やサービスを出す側が考えるべき点
推し活市場の事業者にとっては、これは課題であると同時に機会でもある。購入額を見える化する機能、月の上限を自分で設定できる仕組み、収納や飾り方を提案するサービスには、需要が伸びる余地がある。過度な購買をあおる設計は、短期の売上を伸ばしても、結婚や出産で離れる顧客を増やしかねない。長く楽しめる設計こそ、顧客との関係を守る。ランキングの数字を、利用者の悩みの声として読み替えることが出発点になる。
